2010年2月26日金曜日

プロスペローの本

昨日に引き続き、みなさんにぜひ、見ていただきたい映画の紹介です。

P・グリーナウェイが、シェークスピア最後の戯曲『テンペスト』を題材にして撮った復讐劇。

かつてミラノの大公だったプロスペローは12年前、ナポリ王アロンゾーと共謀した弟アントーニオに公国を 奪われ、ミラノを追われてヨーロッパから遠く離れた絶海の孤島に15歳になる娘ミランダと共に静かに暮らしていた。
その後、彼はその長い歳月の中、友人ゴンザーローが彼に託した24冊の魔法の本を読み耽り、偉大なる力を身に着けていた。そして遠いミラノを想って、島をルネサンス風の小イタリア王国に築き上げた彼は、公国を強奪した宿敵を倒す復讐劇の創作を始める……。
魔法を操るプロスペローという特異な主人公、美しい音楽を奏でる妖精エアリエルや化け物のように醜いキャリバンといった幻想的・怪異的な登場人物、夢幻的な島の雰囲気など、シェイクスピアの持つ詩的想像力豊かな世界を、グリーナウェイならではの独特の持ち味で表現はしているものの、いかんせん『テンペスト』を知らないとちょっとついて行くのが困難で、あまり門戸の広い作品ではない。
とはいうものの、原作にはない24冊の魔法の本の登場、ルネサンス期の彫刻たちがもし動きだしたらというアイディアなど、絵画では表現出来ない幻想と魔法を人工的に映像化した絵作りには、独特の映像美がふんだんに盛り込まれており、加えてバロック美術への傾倒とM・ナイマンの音楽が全編を覆っているので、内容はともかく神秘さとグロテスクさの映像美を体験するのなら、かなり広範囲の人々に楽しめる作品になっている。

CGと映像美、そしてカリグラフィの美しさを堪能するならぜひ、ご覧ください。

















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